昔から下手な医者のことを日本語では「やぶ医者」と言い表します。
日常生活でも使うことの多いこの言葉の意味を知っている人は多いと思いますが、
この「やぶ」がどんな意味なのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。
これについては、テレビ局の特集やよくあるネットの情報で今の兵庫県北部にあたる但馬国の地名
「養父(やぶ)」が由来となっているという説が一般的です。
しかし、実はこれは誤りであるため、今回は正しい「やぶ医者」の由来についてご紹介していきます。
1・やぶ医者の意味は?
まずは改めて「やぶ医者」の意味について述べておきます。
「やぶ医者」とは、十分な能力や技術を持たない医師を示す言葉であり、主に悪い意味として捉えられています。
ちなみに、はじめに紹介した「養父説」とは、江戸時代に存在した優秀な医者の一族らが徐々に名医だと知られるようになって行き、
養父の医者の名前を騙った偽者が現れるようになったというものです。
その偽者の中には能力の低い医師が多く存在したため、「やぶ医者」というのが下手な医者を現すようになったとされています。
ところが、この説には大きな矛盾点があり、下手な医者を意味したとされる「藪薬師」という用語は江戸時代よりはるか昔から文献に存在していたのです。
そのため、この説は間違った説とされています。
2・やぶ医者の由来や語源は?
では、「やぶ医者」の本来の由来について説明していきます。
多くの国語辞典に載っているのは、「やぶ」は「野巫」から由来しているという説です。
これは呪術を用いて治療をする田舎の医者であり、古くから使用されてきました。
ただ、「野巫」に関しては正体不明な点も多く、詳しく調べようと思ってもそれほど情報量が出てきません。
さらに、南北朝時代から存在した『筑波問答』に記載されている「藪連歌」というのは稚拙な連歌という意味であり、
呪術を用いる医者とは関係ないため、必ずしも「野巫」が正しい説と言うことにはならないのです。
ちなみに、国語学者である岩淵悦太郎は「藪」という漢字が自然豊かな「田舎」を意味しているという説を唱えています。
田舎の医者であり、田舎の連歌だからこそ、下手な医者や稚拙な連歌という意味に発展していったわけです。
3・やぶ医者大賞もある?
ところで、「やぶ医者大賞」と言うものが存在することを知っている人はいるでしょうか。
対象となるのは、へき地の公的病院及び診療所に5年以上勤務する50歳未満で、
地域医療に頑張っている医師及び歯科医師となります。
これは本来の意味での「やぶ医者」が田舎にひっそりと住んでいる名医だったことからきているのですが、
そうした人たちの功績を称えるために、やぶ医者大賞を受賞すると、なんと奨励金50万円が贈られるそうです。
世間から間違った認識をされている「やぶ医者」という言葉も、こうした活動によって正しい意味が広がっていけば徐々に使い方が変わってくるかもしれませんね。
まとめ
今回は「やぶ医者」の本来の由来についてご紹介しました。
これまで能力の低い医者だと世間には知られていましたが、実は有能な医者をほかの人が騙り始めたのが由来だったということで驚いた人もいたのではないでしょうか。
「養父説」と「野巫説」以外にも色々な説が囁かれているので、自分で調べてみても面白いかもしれません。
知識として記憶しておけばいつかどこかで必ず役に立つので、これをきっかけにして、奥深い日本語の世界へと足を踏み入れてみてくださいね。
コメント