ニュースや新聞などで著名人の逝去を扱う際、その人のこれまでの経歴や功績、
さらに仲間内からのコメントといった哀悼と感謝の気持ちがつづられることがよくあります。
そうしたとき、記事の最後に「押しも押されもしない俳優だった」と書かれているのを見たことがないでしょうか。
この「押しも押されもしない」という言葉でよくあるのが「押しも押されぬ」と表記してしまうことです。
今回はこの2つの違いと、その歴史、正しい使い方をご紹介しますので、ぜひ興味を持って読んでみてください。
1・押しも押されぬの意味や歴史は?
「押しも押されぬ」について紹介する前に、まず「押しも押されぬ」と「押しも押されもせぬ」の違いについてはっきりとさせておきたい思います。
日常的に使う際はこの2つの違いについて気にならないという人もいるかもしれませんが、
実は「押しも押されぬ」というのは国語的には誤りとされています。
もし言い換えるのであれば「押すに押されぬ」というべきでしょう。
どうして「押しも押されぬ」という言葉が誕生し、ここまで世間に浸透したかというと、
既述した「押しも押されもせぬ」と「押すに押されぬ」が混ざったとされています。
実は自分も間違えていたと気づいた人もいると思いますが、実は平成15年に文化庁が調査をしており、
「実力があって堂々としていること」という意味を持つ慣用句はどちらかを聞いたところ、
「押しも押されぬ」と答えた人が約51%、
「押しも押されもせぬ」と答えた人が約37%だったそうです。
こうしたことを前提にして、今回は「押しも押されぬ」について説明していきます。
国語辞典に載っている意味としては「どこへ出ても圧倒されない実力があり、堂々としている」というものです。
「押しも押されぬ人物」や「押しも押されぬ実力者」といったように使われることが多いですが、
一見して意味が捉えにくいこともあって意味を間違えている人も一定数いるようですね。
2・なぜ「押す」の?
そもそも「押しも押されぬ」はどうして「押す」のか。
「押す」という言葉には複数の意味が含まれていますが、そのどれもが「ものに力を加える」や「それによって目的を果たすこと」
といった意味を持つという共通点があるとされています。
ここから言えるのは、自分にはどうにもできないほどの実力の高いものという存在を誰かに対して分かりや
すく伝えるために「押せない」という表現を使うようになったのかもしれませんね。
3・中途半端な実力を意味する?
「押しも押されもせぬ」について実力があって堂々としている様を表すとしてきましたが、
実はこうした「堂々たる実力を誇っている」といった意味以外にも、「自分から押すこともなく、
他人からも押されない」という意味を持っているといわれることがあります。
これは堂々としているというよりむしろ中途半端な印象を感じるのではないでしょうか。
本来の使い方はこちらの中途半端な意味合いを含んだ言葉なのですが、時代の流れとともに進化して、
今では実力がある人のことを表現するときに使用することが多いそうです。
まとめ
これまで「押しも押されぬ」または「押しも押されもせぬ」について意味や違いをご紹介してきましたがいかがだったでしょうか。
日本語は1文字でも変わってしまうとニュアンスが変化し、意味までもが変わってしまう繊細は言葉です。
ぜひ正しい表現方法と正しい使い方を覚えて日本語についての知識を深めてみてください。
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