チリンチリ~ン♪、風鈴の音。
昔は縁側の軒先にぶら下がっていたのをうっすらと覚えています。
風鈴の音に「涼」を感ずるのは、日本人ならでは。
エアコンは確かに体感温度を下げてくれ、“冷たい”といった感覚を得ることはできます。
が、「涼」という五感で感ずる何かが欠けている感じがします。
とはいっても、実際に風鈴、すだれ、金魚鉢・・・・などを経験していなければ、心から「涼」に共感することはできないでしょう。
私らの世代すらあやしいのに、若い年齢の世代はどう感じるのでしょうか?
そこで、今回は、季節の風物詩であり、エコな面でも注目されている『五感の涼』の代表的なものをご紹介します。
五感の涼とは?
五感で涼をとる。
“涼をとる”という表現は日本ならではでないでしょうか。
昔ながらの日本の暮らしには五感で涼しさを感じる“知恵”がたくさんありました。
家中のふすまや障子を「簾障子(すだれしょうじ)」に取り変える。
「建具替えの日」があったそうです。
現代では、そこまではいきませんが、窓の外に簾をかけて日陰を作る。
藺草(いぐさ)や竹の青々とした見た目の清涼感や匂い、風鈴の涼しげな音色などなど、目で感じ、耳や鼻で感じ、肌で感じる。
この想像力の豊かさが、まさに五感で涼です。
視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚が消えて行く
五感とは「視覚」・「聴覚」・「触覚」・「嗅覚」そして、「味覚」です。
これから、それぞれで感じる「夏の涼」を、列挙していきますが、皆さん「五感で感ずる涼」にどれほど共感できますでしょうか?
感じ取れないものが多いほど、「涼」という日本文化は伝承されず、消えて行ってしまうばかりなのでしょうか?
(1) 視覚≪目で感じる涼≫
・金魚鉢: 水辺の情景を室内で楽しむ。
最初、ガラスは高価だったため、もっぱら上から眺めていました。
出目金は上から眺めるのに適した金魚として人気だったそうです。
・釣忍(つりしのぶ): 竹や針金を芯にして山苔(やまごけ)」を巻き付け、その上にしのぶ草を巻き付けて、さまざまな形に仕立てたもの、
・簾(すだれ)、葭(よしず): “簾(すだれ)”は吊るして、“葭(よしづ)”は立てかけて、直射日光を遮り、風を通すだけでなく、見た目も涼やかです。
・蚊帳(かや): 緑、藍色、白のきめ細かい網状のもの。 風が通り、涼しげな蚊帳の中で、安心して寝る心地よさは格別です。
(2)聴覚≪耳で感じる涼≫
・風鈴(ふうりん): 縁側や、窓際など風の通り道に吊るします。 風鈴の音色に心が和みます。
・水琴窟(すいきんくつ): 水瓶(みずがめ)の底に小さな穴をあけ、この瓶を逆さにして土の中に埋めたもの。
ここに水を流すと、穴から落ちる水滴の音が、瓶の中で反響しあい、琴の音のように聞こえます。
その揺らぎの音は、なんともいえない心地好さがあります。
(3)触覚≪肌で感じる涼≫
・井戸水: 地下深くを流れる井戸水は、外気の影響をほとんど受けず常に14℃程度を保っているので、夏は冷たく感じます。
・打ち水(うちみず): 撒いた水が蒸発する時に熱が奪われ、気温が下がる。
その他には、“藺草(いぐさ)”、“浴衣・甚平”、“団扇(うちわ)”などがあります。
(4)嗅覚(きゅうかく)≪鼻で感じる涼≫
・夕立の匂い: 雨でぬれた土の匂い。 むわっとした中にも、暑さの和らぎを感じませんか。
(5)味覚≪食べて感じる涼≫
・ところてん: 天草から作られる心太(ところてん)は、正倉院の書物にも出る程歴史の古い食べ物です。
・ラムネ: 明治初期、英国より伝来。
レモネードが訛ってラムネとなりました。
ビー玉で栓をしたガラス瓶は清涼感たっぷりです。
まとめ
いかがでしたか?「五感で感じる涼」をいろいろ取り上げましたが、皆さんどれ程、実体験されています?
たとえ、全てを“知識”として、得ていても、それを五感で直接感じ取れなければ、「五感の涼」の神髄は分からないものなのでしょうね。
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