日本では昔から手が回らなくなるほど忙しいときに「猫の手も借りたい」と表現することがあります。
日常でよく使われる言葉であり、聞いたことのない人は少ないのではないでしょうか。
しかし、よく聞く言葉でありながら、どうして「猫」の手を「借りたい」のか不思議に思うこともあるでしょう。
そういうわけで、今回は「猫の手も借りたい」という言葉についてその意味と由来を詳しく説明していきたいと思います。
意外と知らない事実もあるので、ぜひ最後まで読んで日本語の奥深さを知ってみてくださいね。
1・猫の手も借りたいの意味?
最初に「猫の手も借りたい」ということわざの意味について紹介しようと思います。
国語辞典に載っているものとしては、「非常に忙しく、誰でもかまわないから手伝ってほしい」が一般的です。
たとえば「年末の仕事は猫の手も借りたいほどの忙しさだ」や「猫の手も借りたい状況にいる」といった例文を作ることができます。
このことわざの由来としては江戸時代まで遡るといわれています。
時代としては江戸時代中期ごろ、近松門左衛門作という人が自身の浄瑠璃(現代で言うところの劇場音楽)である「関八州繋馬(かんはっしゅうつなぎうま)」という曲にて、
忙しい様子を「上から下までお目出度と、猫の手もかりたい忙しさ」と表現したところから誕生したとされています。
2・なぜ?猫なの?他の動物でも?
ことわざの意味と由来は上記で触れたとおりですが、ここで疑問に思うのが「どうして猫なのか」ということではないでしょうか。
支援や応援、手伝いの要請をするのであれば人の手を借りるほうがよっぽど役に立つはずですが、昔の人は「猫」と表現しました。
これは、「猫」という存在が気まぐれで自己中心的な性格であるということが関係しています。
猫とよく比較されるのが「犬」ですが、犬は飼い主に忠誠を尽くし、命令を出すとすぐに対応してくれる動物です。
しかし、これと反対に猫という生き物は命令をしても単純に従ってくれないどころか、
反抗してくることもあり、いたずらな部分を併せ持っています。
人間側の立場になって猫の役に立つところといえばネズミを狩ることくらいしかありません。
それでも、そんな「命令には簡単に従わず、ネズミを狩ることくらいしか取り柄のない存在でも手を借りたいほど忙しい」という意味で「猫」が用いられました。
3・相手に失礼にあたる?
「猫の手も借りたい」を日常生活の中で使用するときに注意してほしいのが、この表現は決してほめ言葉ではないというところです。
記述しましたが、「猫の手も借りたい」の意味としては「誰でもいいから手伝ってほしいほど忙しい」ということをあらわしているため、
このとき必要とされる「猫の手」は役立たず、下の立場の人間といった意味合いが含まれてしまいます。
これをどんな事態にも対応できる優秀な人間に対して使ってしまっては相手先様に大変失礼なのです。
そのため、「猫の手も借りたい」ということわざは先輩や上司、取引先の方などには使わないようにしましょう。
まとめ
今回は「猫の手も借りたい」についてご紹介してきましたがいかがだったでしょうか。
現代では人間の手が忙しくなるとAIなどの機械に仕事がまわされることもあり、
なかなか「猫の手も借りたい」という言葉を使う機会がないかもしれませんが、日本語を正しい場面で正しい使い方をすることはとても大切なことです。
まして、この言葉は他人に使うとその人をけなしているようにも捉えられてしまうため、
使用するときは自分の忙しさに対して使うようにすると間違えることもないでしょう。
また、一説では忙しさだけでなく、喜びの表現も含まれているとされるため、嬉しい悲鳴をあげているときに使うといいかもしれませんね。
「猫」という動物の自由気ままな性格を知ることができることわざです。
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